冨安健洋がマッチデイプログラムで語ったこと
- 2021.09.28
- Interview
- Takehiro Tomiyasu

エミレーツスタジアムで早々のデビューを果たした、タケヒロ・トミヤス。
そのままプレミアリーグのスターティングⅪに定着して、先日のノースロンドンダービーでも大活躍。[Arsenal 3-1 Tottenham]
贔屓目ではなく、実際にファンが選ぶMan of The Matchに選出されているくらいには活躍した。1G/1Aを記録したMade in Hale Endを差し置いて。
そして、そのトットナム戦のマッチデイプログラムに冨安健洋のインタビューが載ったそうな。
初めてのイングリッシュフットボール、ファンとの絆を語っている。
冨安健洋、すべて語る

‘I’VE NEVER HEARD SOUND LIKE IT BEFORE’
はじめに
2週間前、ノリッジ戦。それは新たな始まりのように感じられた。プレミアリーグ開幕から3試合で勝ち点はおろか、ゴールすら奪えないという、なんとも貧相なスタートを切っていたため、注目が集まっていた。さらにその間、おそらく重要なことに、何人かの主要選手を欠いていた。そのため、9月上旬に入った中断期間のインターナショナルブレイクを経て、新たに編成されたチームをようやく見ることができたときには、希望が湧いてきた。
ベン・ホワイトとアーロン・ラムズデールがエミレーツスタジアムでのデビューを果たし、マルティン・ウーデゴールはレアルマドリードとの契約を解消して加入した。
そして、冨安健洋(Takehiro Tomiyasu)。アーセナル新戦力の一人である彼はノースロンドンに新鮮なオプチミズムをもたらした。
トミは、移籍市場最終日にイタリアのボローニャから移籍してきた。
この22歳のディフェンダーは、日本代表での任務を終えてビザが下りるのを待っていたため、試合前に新しいチームメイトとトレーニングを行えたのは、1度だけだった。しかし、彼はすぐにあの試合のスターティングメンバーに抜擢された。私たちより1つ上の19位カナリーズ戦。
そして彼は、このテストを見事にクリアしたのである。エミレーツのファンは、即座にこの新RBを気に入り、ハーフタイム直前にはゴールを決めて、印象的なデビューを飾る寸前までいった。
しかし、アーセナルのユニフォームを着た最初の試合で彼が望んだのは、勝利とクリーンシートだった。この若きディフェンダーは、サポーターから受けた熱烈な歓迎に感謝していると語った。
冨安健洋、デビューを振り返る
デビューの日はアメイジングだった。
プレミアリーグでプレイすることが大きな夢だったから、特別な日だった。
そのデビューがホームのエミレーツスタジアム。とても素晴らしかった。
あんな歓声は今まで聞いたことがなかった。人生で初めてだ!
だから、私にとって本当に特別な瞬間だったし、一生忘れない出来事になった。
今まであんなに大勢のサポーターの前に立ったことがなかったから、あの声量には驚いた。
でも、試合中はプレイに集中していた。もうとにかく必死だった。
それ以前のキャリアの中で、最も多くの観客の前でプレイしたのは、代表でのアジアカップ決勝、2019年のカタール戦だったかもしれない。しかし、それはエミレーツほどの規模ではなかった。こっちの方がはるかに大きな音で、はるかにデカかった!
驚きの連続だった。ピッチに入った瞬間から。ボールを受けたり、触れたりするたびに歓声が聞こえてくる。そしてもちろんゴールのときも。
私の友人や家族は、残念ながらこの試合に来ることができなかったけど、私の両親もできるだけ早く駆けつけたいと思ってくれている。
観客だけでなく、チームメイトも歓迎してくれた
私がロンドンに到着してから、選手はもちろん、スタッフもみんなが助けてくれた。
ノリッジとの試合の前は、正直言ってとても緊張していた。だから本当に救われた。
特にマルティン・ウーデゴールには、『この時間を楽しめばいいんだ』(you just have to enjoy this time, really enjoy it)と声を掛けてもらった。そして実際にそれを心掛けたら、スリーポイントを掴むことができたんだ!
総じて良い日だったと思う。でも自分のパフォーマンスに焦点を当てると、実は100%満足しているわけではない。ディフェンス面でいくつかミスをしてしまったからね。
試合後、両親から祝福のメッセージを貰ったけど、私にとってはまだ始まったばかり。まだ1試合。努力を重ねる必要がある。
Tomiyasu: “It was a special day for me… Especially to do that at Emirates Stadium as well – it was just wonderful. I can tell you that I’ve never heard a sound like that before – never in my life. So it was really special for me. I will always remember it.” pic.twitter.com/DArc5njZzo
— Chris Wheatley (@ChrisWheatley_) September 27, 2021
プレミアリーグは夢の舞台
物腰が柔らかく、思慮深い若き日本人ディフェンダーと話していると、「努力」「自分を高める」というテーマが繰り返し出てくる。彼は非常に勤勉で、すでに素晴らしい英語を身につけているのだが、できるだけ早くブラッシュアップさせたいと意欲を見せた。(ボローニャに2年間在籍していたときは、イタリア語をすぐに覚えている)
しかし、そんな彼が最も努力しているのはピッチでの向上。彼曰く、明確なきっかけがあるのだという。
それは、2015年11月15日にマンチェスターで行われたU19日本代表 v U19イングランド代表とのフレンドリーマッチ。当時まだ17歳だったトミは、アーセナルのエインズリー・メイトランド・ナイルズとダン・クローリー(現バーミンガム)を擁するイングランド代表との試合に出場。結果は「5-1」で敗れた。
しかし、トミにとってこの試合は、到達すべき基準が浮き彫りなった印象深いものだったようだ。
あの試合は、私がプレミアリーグでプレイしたいと思った大きな理由のひとつ。
「5-1」で負けてしまい、ほとんど何もできなかった。あの時、いつかイングランドで戦えるレベルにならなければならないと思った。
あのレベルに到達するためには、もっと上達しなければならないと、プレミアリーグが私の目標になった瞬間だった。そして今、こうしてここにいるのだから、満足感はあるし、同時にこれからも努力していこうと気を引き締めているよ。
アーセナル打診、断る理由ない
この6年間の努力が報われたのか、アーセナルから声が掛かった。8月31日の移籍市場が閉まる直前。福岡出身のディフェンダーが移籍を検討する時間はほとんどなかった。しかし幸いなことに、彼は考える時間を必要としなかった。
私にとってアーセナルは世界のビッグクラブのひとつだから、断る理由なんてなかった。
オファーを受けたとき、アーセナルの一員になりたいと思った。至極単純なことだった。
より高いレベルでプレイしたいと思っていたし、アーセナルからこのようなチャンスを与えられたことにとても感謝している。オファーの事実を知ったときは信じられなかった。
知った瞬間、とても興奮した。誰かに電話したり、アドバイスを求めたりする必要はなかった。それくらい私にとっては簡単な選択だった。
なぜなら、アーセナルだから。(because it’s Arsenal)
サインをする前にマネジャーと話す時間もなかった。でもその必要もなかった。とにかく来たかった。
契約が成立した後、トミは代表の任務に参加していたため、合流まで数日は待たなければならなかった。そして、すぐにロンドンコルニーでの活動が始まった。
到着したのは数日前。チームメイトとトレーニングセッションに入ったのは、ほんの数回。
でも、チームメイトはみんなとても親切にしてくれて、たくさん助けてくれた。だから、もうチームの一員になったような気分。
ニコラ・ペペとは代表で対戦したことがあったから、彼のことは知っていたけど、他は知らなかった。
フットボールにもロンドンの生活にも、もっと適応しなければならない。でも今のサポートがあれば、すぐに慣れると思う。
吉田麻也と岡崎慎司からプレミアリーグを学ぶ
プレミアリーグは彼にとってゼロの衝撃ではなかった。彼の長年の友人であり、日本代表の中心的なディフェンスパートナーである吉田麻也の影響で以前からイングリッシュフットボールに興味を持っていたのだという。
実は、私はあまりフットボールの試合を見ない。でもプレミアリーグが好きだったのは事実。
それは、吉田麻也選手がサウサンプトンでプレイしていたからだと思う。
彼は私の親友で、日本代表でも一緒にプレイしたことがあるから、プレミアリーグのことだったりをいつもいろいろ聞いていた。彼からは多くのことを学んだ。
今、プレミアリーグといえば、真っ先に思い浮かぶのはMaya Yoshidaになるだろうね。
しかし、Gunnersに加わったトミが見習いたいと思っているのは、岡崎慎司というもうひとりの日本人プレイヤー。
岡崎は2017年にタイトルを獲得したレスターの一員であり、トミはそれを目標にしている。
もちろん、プレミアリーグ制覇は私にとっても大きな夢。そしてチャンピオンズリーグ制覇も。
それを達成するために、私はすべてを捧げるつもり。
毎日、より良くなりたいと思っているし、ディフェンダーだから毎試合クリーンシートを達成したい。
最も重要なことは、3ポイントを獲得すること。クリーンシートを達成できれば、1つのゴールで勝つことができる。
今回の試合に出場したことで、トミは稲本潤一、宮市亮に続く3人目の日本人ファーストチームプレイヤーとなった。しかし、2人ともGunnersでのキャリアは控えめであった。それでも、この新加入選手はその流れを変えることができると確信している。
そうしなければならない!
ここで成功する自信はあるし、アーセナルで成功する日本人選手になれるように努力しなければならない。
日本のみんなも興奮してくれていると思う。
アーセナルでプレイすることは、それくらい大きな意味がある。でも、正直なところ、注目はあまり気にしていない。
ここで良いプレイをして、良い仕事をすることに集中している。
日本の皆がフットボールにとても情熱的であることは確かだし、日本における最大のスポーツだと思う。野球も人気だけど、今はフットボールじゃないかな。
ファンのいるスタジアムに感動
セリエAではほとんどが無観客、夏の東京オリンピックでもファン不在の影響を痛感したという。日本のファンが素晴らしい雰囲気を作れれば、オリンピック日本代表は4位ではなく、メダル獲得へ一直線だったかもしれない。
Yes, オリンピックではとても寂しい思いをした。
日本で開催されるオリンピックをずっと楽しみにしてきたから、それができず残念だった。
でも、良い経験になった。準決勝にだって進むことができたのだから。
イタリアではファン不在のままプレイしていた。前回のインターナショナルブレイクでは、カタールで中国と対戦したけど、そのときも観客は一人もいなかった。
だから、ファンが戻ってきてくれたことはとてもうれしい。サポーターは常に私を助けてくれるし、多くのエナジーを与えてくれる。
多くのファンが疑問に思っているのは、彼がどこでプレイするかということ。
母国ではセンターバックを務める彼は、直近のプレミアリーグではフルバックを務めてきた。
しかし、彼はもっと多くのことがこなせると自負する。
アーセナルではライトバックとしてプレイすることが多くなると思うけど、どのポジションでも問題ない。
どこでプレイするかは重要ではない。ただ純粋に試合に出たいだけなんだ。
センターバックでもライトバックでも、フットボールはフットボール!
ポジションによって大きく変わるなんてことはない。
どこであっても、常に頭を使ってプレイしなければならないし、ディフェンスのどのポジションでも賢くなければならない。
若い頃は、ストライカーだったし、高校時代はミッドフィルダーだった。
私にとって最も重要なことは、試合に出て、毎回のトレーニングで自分の価値を示し、チームに入っていくこと。それだけなんだ。
まだ挑戦は始まったばかり
最初の2試合は成功したが、プレミアリーグのフォワードたちを黙らせるというミッションは続いていく。
ここには優秀なディフェンダーが揃っている。
あとはみんなで協力して守るためには、自信が不可欠。
毎試合、情熱を持ってプレイし、自分の仕事をきちんとこなせば、今シーズンはノリッジ戦のように多くのクリーンシートを達成することができるはず。
それができるかどうかは、自分たち次第。私たちはそれを遂行しなければならない!
か、かっこいい。
英語のボキャブラリーも豊富で、ブレない自信を持ち、現状に満足しない姿勢。それでいて目に見える結果を出し続ける一貫性。
すべてがかっこいい。
おわりに
ウーデゴールもかっこいい。トミヤスと同じ22歳なのにもう大ベテランのような肝の据わり方。
元アーセナルということをひけらかしてナンパしたり、若くして好待遇な扱いに染まったことで勉学が疎かになったりして脱落する者も珍しくない世界で、ウーデゴールはプロとしてやってきたんだね。もうみんなカッコ良すぎる。
ご存知の通り、ズッコケスタートだったアーセナル。
トミヤス加入時なんて、1点も取れずリーグ最下位だった。
それが徐々に上向きになってきている。ファンのブーイングがないホームスタジアム、なんて気持ちいいのだろう。がんばれ。
遠い日本の地でできることと言えば、お布施がてらの買って応援か、お手紙カキカキくらい。でも寝惚け眼をこすりながら応援している。そんな日々だ。
The best angle yet… @Buchi_Mana 🔥 pic.twitter.com/P0jmhAPPVp
— Arsenal Women (@ArsenalWFC) September 28, 2021
ブッチーもがんばれ!応援している!
タケヒロ・トミヤスのアーセナルインタビュー
ひとまず、以上!
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